4-1. 細菌がもつ自己防衛手段:制限と修飾
https://gyazo.com/c46126ed3d416a19ff66aa9dd02da825
1) 現象の発見
大腸菌の株によってはファージに抵抗性を示すものがある
ところが、制限を受ける組み合わせでもわずかに増える、修飾されたファージが出現する場合がある
増えるようになったファージは次に同じ株の大腸菌に感染すると、今度はよく増えるようになる
免疫機構を持たない細菌が、ファージに対する自己防御システムとしてもつ制限と修飾がかかわる現象 https://gyazo.com/48549c221f554bfd3cefc20f2a85ed4c
2) 制限と修飾の実体
制限の実体は、細胞抽出液がファージDNAを分解するという現象の発見からDNA分解酵素であることがわかった ある特定の組み合わせの制限酵素とDNAメチラーゼは細胞内に共存するため、宿主細胞は制限酵素をもっていても自身のDNAは保護されているので分解されることはない
他方、メチル化されていないDNAをもつファージは、侵入してもファージDNAが消化されてしまうため、ファージは増えない
上述の修飾されたファージは、たまたま修飾が先行したために生き残り、次回の感染では分解を受けず通常通り増えたのである
制限修飾系は日本でも発見されていた
R因子は渡辺らによって発見されたもので、日本が世界に誇る、分子遺伝学の最先端研究だった 1960年代の後半、渡辺らは研究の過程で、R因子保持菌にファージを感染させても感染できないという不思議な現象を発見した
渡辺はこの現象を宿主依存性制限と呼んだが、これはアーバーらが見つけた現象と同等のものであった 続いて渡辺と高野利也により、ファージDNAがR因子をもつ菌によって特異的に分解されることが突き止められた R因子が制限酵素をコードしていることはその後まもなく証明されたが、彼らはまさに制限酵素の尻尾を掴んだのであり、しかもそれはアーバーらが制限酵素の精製に成功する以前のことであった